最高裁判所第二小法廷 昭和51年(オ)821号 判決 1976年10月01日
熊本市城山上代町五二五番地
(登記簿上の住所 熊本市春日町五一二番地)
上告人
合名会社カネヤマ商店
右代表者清算人
山下鯛蔵
熊本県上益城郡矢部町大字浜町二二八番地
上告人
山下鯛蔵
被上告人
国
右代表者法務大臣
稲葉修
右指定代理人
青木正存
右当事者間の福岡高等裁判所昭和四九年(ム)第四号損害賠償請求再審事件について、同裁判所が昭和五一年四月二六日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができ、その過程の違法はない。右違法のあることを前提とする違憲の主張は、失当である。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田豊 裁判官 本林讓 裁判官 栗本一夫)
(昭和五一年(オ)第八二一号 上告人 合名会社カネヤマ商店 外一名)
上告人らの昭和五一年六月九日付上告理由
一、上告人は被上告人たる御船税務署長、熊本税務署の課税に対し異議申立を為し審査請求を為したところ、同署長は差押を取消し更に国税局長は前記更正決定を全部取消した。
二、即ち被上告人は該課税の非なるを認め上告人の主張を認めたものである。
これにより上告人は国の公務員の不法行為により第一審請求の趣旨どおりの損害を蒙つた。
三、よつて被上告人に対しその損害賠償を請求したのであるが課税処分が違法だとしても担当係官に故意過失はないと判断しているのは不法である。
尚虚構の事実を偽証している美濃田浩、西山徹、中村日義等の証言を採用している。
四、被上告人の故意過失がなくして何で過当な課税が賦課されるものであろうか、
被上告人の課税の非を認め乍ら、その被害に対する損害賠償を認めないのは憲法第十七条
何人も公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより国にその賠償を求めることができる、と謂う権利を閑却したものと云はなければならない。
以上
上告人らの昭和五一年六月一〇日付上告理由
一、本件は昭和三十九年事業年度上告人に対する再更正決定が違法であつた事について国が裁決したので確定して居る。
右裁決は昭和四三年十一月二十二日熊本国税局長星川辰治裁決第七九号に依りなされたものである。
二、右の如く本件の上告人に対する再更正決定が違法であつた事は確定して居るので上告人は再更正決定排除の為めに要したる費用及慰謝料の請求を憲法の定めに依り損害賠償として請求したる処原審に於ては
主文
原告等の請求はいずれも之を棄却する。
訴訟費用は原告等の負担とする。 と判決あり。
控訴審に於ては
主文
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人等の負担とする。 と判決あり。
上告審に於ては
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。 と判決あり。
再審に於ては
主文
本件再審の訴はいづれも却下する。
再審費用は再審原告の負担とする。
と判決ありたり。
三、然れ共本件再更正決定が違法である事は熊本国税局長の裁決に依り既に確定して居るから再更生決定排除の為めに要したる費用慰謝料の請求は憲法に定められたるものなるが故に本件損害賠償の請求を認めない判決をなしたのは憲法違反である。
四、上告人は本件再更正決定が不法であつたので異議申立したる処却下されたから国税局長に審査請求したる処国税局長は五二二日目に全部取消しの裁決をなしたるものである。
上告人は本訴に於ては再更正決定について何等の請求をして居らない。
再更正決定が違法であつたと国の裁決に依り既に確定して居るから損害賠償の請求を憲法の保障の下になしたのであるのに各審に於て棄却或は却下の判決したのは誤りである憲法違反である。
五、上告人は損害賠償請求の為めに本訴提起したものである。
原審に於ては損害賠償の件については何等の判断を示さずして上告人が訴へて居らない訴訟外の再更正決定の是非についてのみ言及して居る。
再更正決定の是非については既に熊本国税局長が違法であつたと裁決して居り既に確定して居るから判断の必要はなく裁判所の判決は誤りである。
六、元来本件再更正決定の理由としたものは事実を偽つた即ち全然理由のない虚偽な事を捏造して再更正決定の理由として居り国の代理権を行使した最も悪い行為であつて故意に依る重過失として損害賠償の責に任ずべきものなり。
七、本件は再更正決定についての可否の訴えではない。
再更正決定は熊本国税局長の裁決に因り違法であると裁決され違法である事が確定したから憲法十七条に基き損害賠償請求する為めに起した訴えである。
再更正決定については既に国が裁決し既に確定して居るので原審判決は一事不再理の法則に反するものである。
国税局長の裁決は己判力を有して同一事実については凡て勾束する本訴請求を却けたる本訴に対する各審の判決は違法違反である。
八、本件再更正決定が虚偽の理由にて更正した事及被上告人の証人が証言を偽証し判決には其の偽証を採用して居りこの件は控訴の書面にて主張し立証した如く原審の判決に多数の判断遺脱がある事は再審の書面にて主張し立証した通りであるのに間違つた原審の判決を支持して本件の損害賠償請求を却け上告人の損害賠償請求を却下し又棄却したのは憲法違反である。
九、本件再更正決定が理由としたのは、架空で虚偽であつた事については不法であるとのみにて主張して来ましたが再審に於ては虚偽であると主張し立証しました。
即ち再更生決定の理由1に普通預金二口を否認する理由として
イ 旭相互銀行田崎支店山下アサカ名義普通預金No.60五九一、〇五八円および住友銀行熊本支店山下泰裕名義普通預金No.35088一二三、五五七円は報酬給料、不動産収入と生活費支出との差額の蓄積であると申立てるも架空借入金を返済したようにして預け入れたりまたは架空仕入、架空経費等の支払(小切手振出)により予け入れるなどその信ぴよう性がなく
としているが、
1 借入金を返済したようにして予け入たる事実なく
2 架空仕入架空経費等の支払(小切手振出)により予け入れるなどの事実なく又小切手振出しの事実なし。
右に甲十九号証ノ五、六にて右預金のない事を立証し甲二十五号証ノ一ノ二にて右預金のない旨立証し又小切手振出の事実なき旨立証したり。
ロ 生活費支出の状況等よりみて剰余金よりなるものと認められずとして二口の普通預金を否認し課税し居るものなり。
1 然れ共生活費の調査されたる事実なく架空の虚偽の事なり而して右の如く虚偽の事を捏造して再更生したものであつて故意に依る重過失である。
而して訴訟進行上判明した事は御船税務署の美濃田が四五、二、二日、本件の証言129原告代表者兼参加人。
架空に支払つた経費があると言はれましたがいくらありますか、
乙五号証旭相互銀行田崎出張所の山下アサカ名義の普通預金たとえば四十年十月三十日三万六千百八十円それから八千円、一万円、一万一千二百五十円それから十二月二十日の三万四百八十円それから乙四号証の四十年十二月十一日それから十四日五万四千八百円と九万六千二百六十円以上です。と証言しました。
右の如く証言に依ると昭和四十事業年度に関するものであつて本件は三十九事業年度(三九、八、一四〇、七、三十一)日間とは無関係である。
依つて三十九事業年度の預金とも少しも関係がない事は事実なり。
十、未達小切手一七二万円についても云々については乙二十四号証を上告人は利益に援用して借入金は会社の預金とし返済の小切手も完済し居る旨立証したりこれは裁決の理由の通りなり。
其他原審の判断に多数の遺脱がある事は控訴審に於ても上告審に於ても再審に於ても主張し陳述し居れり。
本件に対する原審、控訴審、上告審、再審共に上告人の憲法に基く正当なる損害賠償を拒否したるのは憲法違反である。
以上